「ね、ま、りさっ、も……私っ……だから、一緒に……!」
「あ……ぅ、ま、ま……ぅあ、ま、まって、まっ……――――――ッ!!!!」
 びくっ、びくんっ
 魔理沙が跳ねる。シーツをぎゅっと握り締めながら、目を閉じて、震える。
「ぁ……」
「……っ、ぁ、……ッ! ……う……ぁぅ……うぁあ……」
「あ、その、ごめん、急にペース上げすぎちゃった……みたい……」
「っ……あ、アリスの……ばかっ……っく、うぁ、うあああぁんっ」
 ぼとり。ぼとり。
 魔理沙の目から大粒の涙が流れ落ちて、枕の上で鈍い音を立てる。
 そのまま枕に顔から飛び込んでしまう。
「ま、魔理沙?」
「こ、こわ、こわかった、のに、っひくっ、ばかっ」
「……」
「も、もう、わけわからなくて、わからなくて、っぐ……うううううう」
「ごめんね」
 さわ……
 枕に突っ伏して泣き続ける魔理沙の髪を、柔らかく撫でる。
「うううううううううううああああああ」
「怖くないよ……私も一緒だから」
「うう、えぐっ……もう……ごめんっ……わ、私こそ、うまく、伝えられなくてっ……わからなくて……」
「いいのいいの。私が悪いんだから」
「違う、のにっ……泣きたくないのに……泣いたらアリスが、悪いみたいに、ほら、なっちゃうから、泣きたくないのに、なんで、う、ぁ、ごめ、ごめん……やだ……」
「あー……あーもう。魔理沙はいい子ね。ほら、いい子いい子」
 なでなで。
 ひくひくと、魔理沙の肩は震え続ける。涙は止めようとして止められるものではない。ゆっくり時間が必要だ。
 アリスは泣きじゃくりながら同じ言葉を繰り返す魔理沙の頭を、ずっと撫で続けた。


「……恥ずかしくて死にたい」
「死んじゃダメよ。私が悲しいわ」
「うー!」
 まだ何もまとわない体を腕で隠しながら、魔理沙は真っ赤になってそっぽを向いて……
 ちら、とアリスのほうを見る。
 目が合う。
「あー……それで」
「ん?」
「……その」
「なあに?」
「あ、アリス、まだ、だったよな……と思って」
 ちらちら。
 何かを訴えかけるような視線。
 ……アリスは、しばらくぽかんと魔理沙の顔を眺めていたが、たっぷり数秒間をとって、くすりと笑う。
「私は、魔理沙の泣き顔でおなかいっぱいだけどね」
「……アリスなんて死んじゃえ」
「死なないわ。魔理沙が悲しむもの」
「……な、な、なんだよ、そりゃっ」
「そうでしょ?」
「……」
「ね」
 ぷい。
 魔理沙は思い切りわざとらしく頬を膨らませて、体ごとアリスに背中を向けた。
 アリスは間髪置かず、そんな魔理沙の背中から抱きついた。
「ね?」
「……次はアリスを泣かせてやる」
「あら怖い。虐められちゃうのかしら」
「虐めてやる……えいっ!」
 くるりと反転。
 どさり。
 アリスを押し倒す形になる。
 アリスは、にこりと微笑んだ。
「優しくしてね?」
 魔理沙は目を逸らしながら答えた。
「さっきのアリスと同じくらいにはな」