「たった一度しか、そして私にしか使えない魔法を、見せてやるぜ」
そう言って魔理沙は消えたきり。
もう出番は間もないというのにどこに行ってしまったのだろう。こんなことをしている場合じゃないのに。アリスは自分のこと以上に気がかりで、落ち着かない。
そんなアリスの様子を見て、魔理沙は姿を消してしまったのだが――
「遅い……もう、間に合わなくなるわよ……」
思わず、おろおろしてしまう。思えば1人でいるときはいつもそうだ。
魔理沙が隣にいれば、こんなに動揺したりしないのに。
魔理沙がここにいれば、もっと安心していられるのに。
魔理沙が……
「よ、お待たせ」
魔理沙が……来た。
後ろから、その声は聞こえた。
アリスはその瞬間に泣き出しそうなくらい、安心して、嬉しくなってしまうのを堪えて、努めて冷静な仕草で振り向く。
「何よ、こんなに遅れて――」
アリスの言葉は。
一瞬にして、止まってしまう。
「よ。惚れ直したか?」
「……ま……」
「ん?」
何事もないかのように自然に声をかけてくる彼女。
憎らしいほどに、自然に。
「……魔理沙?」
「誰がどう見たって私だぜ」
「……な、な……」
「これから戦いだろ? 気合を入れてやらないとな」
アリスは。
ただ、呆けるばかり。
ああ。でも。
本当はとても言いたかった。
凄く言いたかった。
なんて、可愛い。
なんて、愛しい。
「ば……馬鹿じゃないの。魔法使いがそんな、真っ赤な色で、しかも、そんなに肌を出して……!」
なのに。口をつく言葉は、いつも悪態。
いつもそうだ。アリスは、わかっていても、これが止められない。
思っていることと反対のことばかり言ってしまう。
魔理沙は、しかし、アリスの言葉を聞いたのか聞き流したのか、気に留めた様子もなく、アリスのすぐ隣に立つ。
すぐ目の前に。
「可愛いだろ?」
耳元に囁きかける。誘惑の声。
息が首筋にかかる。
ぞくり、とアリスは震える。やめてほしい。これは、尋問だ。甘美で苦痛な、拷問だ。
「だ、誰が……!」
「認めろよ。もうアリスは私から目が離せない。これは、そんな魔法だ」
「……!」
強い意志を持った声。
その一言に……もう、落ちていた。
魔理沙は、アリスの目の変化を確認すると、にこりと笑顔を見せる。
「さ、時間だ。いつもの服に着替えてから行くか」
「え……?」
その服は何なのか。
アリスは、目が離せないまま……訴えかける。
はは、と魔理沙は笑った。
「こんな格好、他の誰かに見せられるかよ」
ああ。魔理沙は、やっぱり馬鹿に違いない。
アリスは去っていく彼女の後姿を見て、思った。
もうアリスは魔理沙から目が離せない。そんな魔法だと彼女は言った。
「そんな魔法、効くわけないじゃない。……とっくの昔に、かかってるんだから」
言葉は、風に消える。
魔理沙支援! まだまだ増やしたいと思っております。
え? 穿いてますよ? きっと(何が?
そしていっこ追加ー!
謎まんが。
がんばれがんばれー!